思春期の取扱説明書【力を引き出すエンパワーメント】

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「思春期」というと「子どもと接するのが難しい年頃」というイメージがありますよね。思春期の子どもは、口数が減って干渉を嫌がり、コミュニケーションをとるのが難しくなります。一方で、この時期は受験や進路などで親子で話し合わなければならない問題が増える時期で、頭を抱える親御さんも多いのではないでしょうか?

「細かい指示が鬱陶しかった」「いちいち答えるのが面倒だった」「子ども扱いしないで一人の人間として見てほしかった」「他人と比較されるのは嫌だった」「家にいたくなかった」・・・何年も前に、あなた自身も覚えがあるのではないでしょうか?

今日は、アドラー心理学の考え方に基づく「思春期の子どもと上手に関わる方法」についてお話しします。その中で大切なのが「エンパワーメント」というアプローチです。

それでは、思春期の子どもの自尊心を傷つけず上手にかかわるために、親の接し方として大切なポイントについて一緒に学んでいきましょう!

目次

エンパワーメントとは?

もともとは福祉業界で使われる「エンパワーメント」という言葉。直訳すると「力を与える」という意味があります。しかし、ここでいう「力を与える」とは、直接的に力を付け加えるのではなく、個々が本来持っている力や能力を引き出し、それを発揮できるようにサポートするという概念です。

アドラー心理学におけるエンパワーメントは、子どもが自身の問題解決能力を発揮できるよう、親が子どもを支えるという考え方に基づいています。つまり、親が子どもの代わりに問題を解決するのではなく、子ども自身が問題解決の過程を経験し、その中で自己肯定感や自己効力感を養っていくということです。

「子どもの力を信じる」ということですね。

具体的なエンパワーメントの方法としては、子どもが困っている時、すぐに解決策を提示するのではなく、「君ならどうする?」と問いかけることが挙げられます。これによって、子どもは自分自身で考え、行動する機会を得ることができます。たとえば、「部屋の片付け」で悩んでいる場合、すぐに親が片付けてしまうのではなく、子どもが自分で片付けられるようにサポートすることが大切です。「どうやったら片付けられると思う?」と聞くだけでも、子どもの思考を促すことができます。

小さな子どもに対しては具体的な選択肢を。思春期の子どもに対してはより抽象的な問いかけを。

思春期の子どもとの関わり方

1. プライバシーを尊重する

思春期の子どもは、自分自身のアイデンティティを探求する時期です。自分の部屋や個人的な時間を大切にしたいと思うことは、その一部です。例えば、彼らが自分の部屋にいるときにノックする、または予め訪問の許可を得るなど、プライバシーを尊重することが大切です。それを侵害しないようにすることで、子どもは自分の独立性を育てることができます。

2. 開かれたコミュニケーションを保つ

思春期の子どもは自己主張が強くなる傾向があります。それは自分の意見や感情を形成し、表現することを学んでいる証です。子どもが自分の意見を共有しやすい環境を作り、意見が異なるときでも対話を通じて理解しようとすることが大切です。子どもの話を傾聴し、意見を共有する機会を提供しましょう。

3. 彼らの選択を尊重する

思春期の子どもは、自立の一環として、自分の選択とその結果に責任を持つ能力を育てる必要があります。子どもが自分の選択をする機会を与え、その選択の結果を受け入れさせることは、子どもの成長にとって重要です。たとえそれが親として理想的な選択ではない場合でも彼らの選択を尊重し、その結果を通じて彼らが学ぶことをサポートすることが大切です。

4. 助けを必要とする時は援助する

思春期は難しい問題に直面することもあるかもしれません。それは学校の問題、友人関係の問題、自己評価の問題など、さまざまな形で現れる可能性があります。そうした状況で親としてできることは、適切な助けやガイダンスを提供することです。しかし、子どもが自分で解決策を見つけることができるように、介入は最小限に抑えることが重要です。

5. 彼らの成功を祝い、失敗から学ぶことを助ける

すべての子どもが、成功と失敗の経験から学ぶ必要があります。成功を祝うときは、子どもの努力を讃えることを忘れないでください。また、失敗したときは、それを否定するのではなく、失敗は成長の一部であり、次に向けての学習の機会であることを伝え、子どもが失敗から学ぶことをサポートすることが重要です。

思春期の子どもと上手に関わるためには、彼らの成長と独立を理解し、支援することが重要!

気を付けて!ついやってしまいがちなNGな関わり方

次の行動は、子どもの自尊心や自立、自己表現の発達を妨げる可能性があります。思春期の子どもとの関わり方において、避けるべき親の言動をいくつか挙げてみましょう。言葉かけの例も参考にしてみてください。

1. 批判的な態度

思春期の子どもは自己評価の形成と自我の発達に敏感な時期です。親からの無意識の批判や否定的な評価は、彼らの自尊心を傷つける可能性があります。

〇:「その方法だと難しくなるかもしれないね。でも他にどんな方法があるか一緒に考えてみよう。」

×:「また同じ失敗をしたのか。なんでそんなに無能なんだ。」

2. 過度なコントロール

子どもの自立を促すためには、彼らが自己決定を行い、その結果に責任を持つことが重要です。そのため、親が過度にコントロールしようとすると、子どもの自立を阻害する可能性があります。

〇:「これはあなたの決断だから、自分で最終的な選択をするように。」

×:「私が決めたとおりにしなさい。それが最善だから。」

3. 私生活への過度な干渉

思春期の子どもはプライバシーを強く求める傾向があります。親がそれを侵害すると、子どもの自尊心や自己主張、独立性を損なう可能性があります。

〇:「部屋に入っても大丈夫?」

×:「私は親だから、いつでもあなたの部屋に入る権利がある。」

4. 期待値の押し付け

親自身の未達成の夢や期待を子どもに押し付けることは、子どもの自己同一性の形成を阻害する可能性があります。子どもには自分自身の道を見つける自由が必要です。

〇:「あなたが何をするにしても、私たちはあなたを全力で支えるよ。」

×:「私が子どもの頃にできなかったことを、あなたには達成して欲しい。」

5. 閉鎖的なコミュニケーション

意見の相違や問題が発生した場合に、子どもの話を遮ったり、親が常に正しいと主張する行為は、子どもの自己表現や問題解決能力の発達を妨げます。

〇:「あなたの意見を聞かせて。それはどうしてそう思ったの?」

×:「親の言うことを聞きなさい。あなたはまだ子どもだから分からない。」

思春期の子どもとの関わり方は子どもの性格や状況により変わるため、柔軟な対応が求められます。

まとめ

今日は、思春期の子どもと上手に関わるためのアドラー心理学に基づいた方法についてご紹介しました。その中心は「共感と尊重」です。子どものプライバシーを尊重し、開かれたコミュニケーションを保つこと。そして、彼らの選択を尊重し、必要な時には援助を提供し、成功を祝い、失敗から学ぶことを助けることが大切です。

思春期の子どもとの関わり方は簡単なものではありませんが、これらのアドバイスがお役に立てれば幸いです。子どもの成長と自立を見守り、それを支援することが親として最も大切な役割です。

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